掲示板の「きいとん増田」さん(caramelbox.comウェブ・マスター)の発言(1999年2月8日)の一部へのお答えと、親指シフトの未来について思ってること

[2月10日]

> なによりもローマ字入力は、アルファベットの配列を覚えるだけですむメリットがあります。英単語が混じる文章を入力する人や、プログラミングとドキュメントの両方を入力する人。そんな人がかな入力をしようものなら、覚えるキー配列が増えてしまいますよね。そこでキー配列を意識して入力をすることのほうが、非効率的です。

> たぶん、ローマ字入力をすすめる人は、上にあげたような作業が多い人ではないでしょうか? 完全に日本語だけの文章は、現代においてほとんどないですから、ローマ字入力派が多数になってしまったように思います。


 この「完全に日本語だけの文章は、現代においてほとんどないですから、ローマ字入力派が多数になってしまった」というきいとんさんの指摘は、はずれていると思いますぞーーー。アルファベットを文中に使うのは、ほーーんの一部ですし。まぁ、パソコン雑誌の編集の人とか、パソコンメーカーの人とかだったら、そりゃー文章の半分はアルファベットでしょうけど……。
 「ローマ字入力が多数派」というのは、統計がないのでなんとも言えませんが、「オフィス」という部分でのことだと思います。パソコンが普及したのは最近のことで、そのときに自然についてきた(入ってみたら会社にあった)キーボードが「カナ+アルファベット」で、そのどちらかを選択するしかない。だったら、指を不自然に動かさなきゃいけないカナ入力よりも、ローマ字入力の方が覚えるのも打つのも楽だ。そういうことだと思います。
 で、「覚えるキー配列が増えてしまう」というのは、カナ配列を利用している人にとっては、的はずれな指摘ではないでしょうかねぇ。

 アルファベットを覚えて、早く打てるようになった。で、そういう人が、なんであと46文字の日本語カナのキーを覚えないの?もったいない。まぁ、なにしろJISキーボードのカナ入力は、大正時代に決められたモノがそのまま残っているそうなので、打ちにくくてあたりまえなのですけどね。

 日本語なんて、ただでさえ、かな、カナ、漢字、アルファベット、が入り交じった言葉です。で、それを全て、手で書くときは分けて書いている。なのに、キーボードでは全部アルファベットで入力する。その不合理が、「文章打ち」にとってはとても不思議です。

 だったら、漢字も直接打ち込めるキーボードを作っちゃえばいい、というのが、「カナタイプ」で、ありゃすごかったっすねー、塾でバイトしていた時代にそこにあったんですが、部首別に分けられたキーボード(のでかいやつ)を探して、そこに割り当てられた10個ぐらいの漢字の中から、なんかシフトキーのでかいのみたいのを使って一つの文字を入力する、というシステムだったような覚えがあります。で、僕は「ワープロにすればいいじゃないですか」と言ったら、そこの先生方は、「いやー、もう慣れちゃったからこっちの方が速いね」と、がっちゃんがっちゃん、すごいスピードでテキストを打っていました。
 ただし、発想のスピードと同時にいけるか、というとそういうわけではありませんでしたけどね。

 話がそれましたが、僕がローマ字入力をしていると思うのは、日本語って、意外に濁音、半濁音、撥音、促音が多い、ってこと。
 これを「っ」を「xtu」と入力しなきゃいかん、というのが、まず不合理に思えるのです(「だった」って時は「datta」だからいいっちゃいいけど)。まぁ、これは慣れだ、と言われればそれまでですが、僕にとって「っ」は「っ」だし。「ぢ」を「di」って、許せないのね。それ、「でぃ」じゃん。で、「でぃ」は「dhi」なのね。ヘンじゃん。あ、ちなみに、カナ入力でも、「ち+゛」ですよね?親指だと「ぢ」は「ぢ」なの。

 というわけで、カナ入力が迫害されてる、ということに関しては、まぁ、気にしすぎかな、という部分はありますが、職能によってどっちかを選べばいいと思うし。
 で、このページではなにれりも、日本語による(←ココが大事)知的生産を大量に行う職能の人は、ローマ字よりもカナよりも、親指シフト(ニコラ配列)がいいよ、と、僕は言いたいわけで。
 僕が言いたい、というよりも、この「ニコラ配列」の推奨は富士通だけがやってるわけじゃなくて、1989年当時はアスキーとかソニーとか松下とか、ひいてはAppleまでが入っていた「日本語入力コンソーシアム(NICOLAはこの略称の元なんですね)」が、「親指シフトはやっぱりすげい。みんな、日本語入力はこれに統一しようよ。そーだそーだそーに決まった(ちょっと口語に訳してみました)」と言っていたものだったわけです。

 で、それがなんでここまで普及しなかったのか。
 それもまた簡単で。

 パソコンを日本語入力の装置として使う人が、パソコンユーザーの中に少なかった、と。それは、オフィスでパソコンがどう使われているかでわかると思うんですが、Windowsの前はDOSでしたよね。つまり、英語のコマンドを入れないと動かない。だから、まずはアルファベットが打てないと仕事にならない、と。で、そういう人が上にいるから、自然に後から入ってくる人はローマ字入力にならざるをえない、と。

 で、ウチの会社の場合は逆で、僕や上層部がみんな親指シフトキーボードのオアシスを使っていたので、初期の社員は全員親指シフトを使わざるを得なかった、と。でも、パソコンが導入されて、いざパソコンで親指シフトを使おうとしたら、そういうマシンはなかった、と。アスキーの親指君、というのはあったけど、98専用だった、と。で、しかも高かった、と。そこに、上記のようなアルファベット打ちの庄村君が入ってきてシステム管理者になった、と(ちなみに、庄村君は親指シフトも使えますけど)。そうこうしているうちに、Macが導入されて、もう、Macで使える親指キーボードはD boardぐらいしかなくて、これがまたいろいろと入力以外の部分で面倒な操作方法が必要で、動作も安定してなかった、と。で、しかも高かった、と。そんなわけで、親指チームはやむを得ずどんどんローマ字入力に直していった、と。そんな流れがありました。

 しかし。
 今、このR board Pro for MACが出ました。
 これもまた高いですけど、だって、いまどき45000円のキーボードがどこにありますか。これ1台で17インチモニタ買えちゃいますよ。
 ですが、今まで問題だった(ホームポジションを崩さないとできなかった)日本語からアルファベットへのスクリプトの変換も、「親指キーの左右同時打鍵」という技を導入してくださったおかげで、一瞬でできるようになりました。だから、最近の僕の文章にはアルファベットが増えているのにお気づきでしょうか。つまり、コマンド入力を必要とする人たちにも、ようやく使い勝手がいいキーボードに成長した、というわけです。だから、僕はこうしてホームページまで作ってお勧めしているというわけです。
 「何をいまさら、そんな化石のような入力方法を持ってきて……」というご意見も確かにいただいてます。そう言う方は、ほぼローマ字入力の方です。
 カナ入力をやっていらっしゃる方は、親指シフトの素晴らしさを聞くと、フラフラッと動きます。が、「45000円」を聞くと、「あ、いーや」となります。そりゃそーだ。

 ですが、今、ここでふんばっておかないと、ベータがVHSに破れたように、「いいのに駆逐される」ということになってしまいます。MacOSが数年前にヤバくなったとき、しぶとく生き残ることができたのは、スティーブ・ジョブスががんばったから。それと、僕等Macユーザーが、なにしろ「買った」から。

 だったら、ちょいとここで僕がR board Pro for MACを買ってがんばるかな、と。で、それを必要としているであろう人たちに伝えてみるかな、と。で、何もしなかったら10台しか売れなかったR board Pro for MACが、20台売れたら、リュウドさんもちょっとは考えてくれるかも。100台売れたら、もっと考えてくれるかも。1000台売れたら、178000円だったものを一夜にして128000円にしちゃったとある会社のように(まわりくどいぞー)、一気に安くしてくれるかも。そーしたら、カナ入力だった人がこの夢のような親指シフトキーボードの世界にやってきてくれるかも。
 そんなふうな夢を抱いているのです。


 「ローマ字で十分速いし、頭の中でひらがなとアルファベットを変換している時間、なんかない。直接日本語をローマ字で考えてる。「xtu」が「っ」であることが、私にとってあたりまえ」と言う方も多いでしょう。
 ただし、それは「意地を張ってる」としか思えませんね。「っ」は「っ」なんだ。これほどシンプルな主張はないでしょ。なおかつ「打鍵数が打ってる文字と同じ数。ローマ字だったら、その1.5〜2倍のキーを打っている」という事実は、動かしようがないわけで。
 だから、親指シフトキーボードで打っていると、「バシバシバシバシ」という、ローマ字入力の人たちがやっているような音はしません。「カタカタカタカタ」というかんじ。だって、頭に浮かんできた言葉をそのまま浮かんだスピードで打っているわけで、頭のスピードで打っていられればいいので。
 あ、ちなみに、「ワープロ検定」のトップに入っている人たちはみんな親指シフトを使っているそうで、これはズルイと思っちゃいますけど、まぁ速く打とうと思えば速いのが親指らしいですけどね。
 僕は、手書きの文章をテキスト化していく、という作業はほとんどしない、というか、ほとんどしたことがないんですけど、そういう場合には圧倒的な早さを誇るらしいですよ。
 だから、テープ起こしとかをやる仕事の方なんかにも最適なんじゃないですかね。
 
 あ、あと、ひらがなからカタカナへの変換が、ローマ字入力だと「option+tab」とかが多いと思うんですけど、なにしろ親指シフトでは「無変換」キーを2回叩けばいい。これが、なんたって鬼のように便利。やってみた人じゃないとわかんないでしょうけど。
 
 てなわけで、この親指シフトキーボードがいかにすぐれたキーボードであるか、ということは、僕が語る以前に古瀬幸広さんが「http://www.ir.rikkyo.ac.jp/~furuse/materials/nicola.html」に書かれている「NICOLA派宣言」というページの、「NICOLA配列を支持する理由」という文章の中に単純明快な論旨で爽快に書かれていますので、是非ご一読ください。

 というわけで、「ローマ字で5年やってきた」という方でパソコンが好きな方は、もうどうぞ、そのままやっててください、って感じなんですけど、カナ入力の方、もしくはローマ字入力で日本語の文章を大量に打つのが仕事、っていう方は、是非、あと46文字覚えればいいんで、1週間がんばれば誰だってできます。ほんと、お勧めいたします。あ、USBには対応していないんで、iMacユーザーの人はあきらめるか、Power MacG3を買い直してください(←むちゃゆーな)。

 ちなみに、この文章はR board Pro for MACで、ローマ字入力で打ってみましたっ!!ここまで来るのに、1時間かかりましたわ。うむむむ。同じモノを親指シフトで打ったら、40分以下だったかなぁ……?!わかりませんが……。
 
 ちゅーわけでしたっ!!